「自然卵」とは?
中島正さんが始めた養鶏方法(「自然卵養鶏」)により産まれた卵を「自然卵」と言います。
「自然卵養鶏」は、以下の10項目を満たすものです。
① 平飼い: | 床は土間で大地の恵みを与える | |
② 開放: | 空気と日光を充分に与える | |
③ 小羽数: | 無理な集積は病気が集積する | |
④ 薄飼い: | 密飼いは病気発生のもととなる | |
⑤ 粗飼料: | 緑餌を充分に与える | |
⑥ 自家配合飼料: | 無薬剤の自家製発酵飼料 | |
⑦ 自家労力: | 共に暮らしてニワトリをよく観察する | |
⑧ 低成長育成: | 育成を急がず強健に育てる | |
⑨ 腹八分目給餌: | 切り餌をして消化吸収を良くする | |
⑩ 八分目産卵: | 無理に産ませずに卵質を良くする |
これらの項目は、一つ一つが独立している訳ではなく、それぞれが密接に関係し合ってるものもあります。
各項目に関して、私たちの考えと共に紹介します。
「平飼い」
「平飼い」は、鶏が鶏舎の中を自由に動き回れる飼育方法のことです。
「平飼い」では、鶏が鶏舎の中を自由に動き回ることができ、のびのびと暮らすことができます。
しかし、ただ単に鶏舎の中を動き回れれば良いという訳ではありません。
鶏舎の床が土間(土)になっていて、鶏が地面を引っ掻き、砂浴びができることが重要です。
砂浴びとは、鶏が地面の砂(土)を自身にかけて、羽の間に入り込んだ虫を落とす習性のことです。
砂浴びは人間でいうところの入浴です。(砂浴びをしている鶏は、目を細めて本当に気持ち良さそうにしています)
また、鶏は脚の爪で地面を引っ掻いたり、くちばしで突いたりして虫などの餌を探す習性があります。
これらの習性を行うためには、土が必要になります。
床が土である必要は、他にもあります。
鶏は生き物ですので、糞をします。
糞が土の上に落ちますが、上で説明したように鶏が地面を引っ掻き回すので、土と糞が混ざり合います。
すると、糞がすぐに乾燥し、悪臭が出ません。
悪臭があると、鶏にも卵にも良くありません。
悪臭の中に鶏がいると、呼吸によって匂いの成分が血液に取り込まれ、それがさらに卵へと移行します。
また、卵の殻を拡大してみると、細かい穴がたくさん空いた構造をしています。
この穴に匂いの成分が取り込まれ、さらには中身に移行してしてします。
卵を食べた際に生臭さを感じる場合は、これらのことが原因の一つになっています。
鶏遊園では、「平飼い」の中でも「放し飼い」を行っています。
「平飼い」は鶏舎の中だけで飼育する方法ですが、「放し飼い」は鶏舎の外に運動場があり、
自由に行き来できる飼育方法です。
「平飼い」も「放し飼い」もどちらも自由に動き回れるといことでは、違いがありません。
しかし、鶏舎の扉を開けると、我先にと駆け出していき、運動場で虫を探して地面を引っ掻き回ったり、
追いかけて走り回ったりします。
雨の日には鶏舎の中で過ごしてもらうのですが、鶏舎に近づくと鶏みんなで「クァ〜」と鳴いて
「外へ行きたい」アピールをします。
「開放」
鶏舎の壁を網状にして開放的にすることで、日光が入り、風が吹き抜けるようになります。
鶏が日光浴を行うことで、羽の間から虫を追い出し、さらにビタミンDを作ります。
鶏は暑さに弱い動物ですので、場合によっては夏の暑さで死んでしまうこともあります。
しかし、真夏の炎天下においても日光浴をします。
それは、なぜでしょうか?
鶏自身が必要だと感じ、本能で行っているからです。
風に関しては、鶏舎の周囲が壁で遮蔽された場合、中の空気は澱んでしまいます。
そこへ病原菌が入り込んだらどうなるでしょうか?
病原菌はそこへとどまり続け、感染する鶏も出てくるでしょう。
そして、すぐに鶏舎全体へと広がってしまいます。
風が吹き抜け、常に新鮮な空気が入る様にしておけば、仮に病原菌が入り込んだとしても、
鶏舎外へ出て行きやすくなります。
2021年現在、コロナウイルスが猛威を奮っていますが、飲食店などの密閉空間において換気をするように
呼びかけられています。
これは「3密回避」の中の一つで「密閉しない」ということです。
この理由は、先ほど鶏舎の説明と全く同じで、ウイルスがそこに留まらないようにし、
感染リスクをできるだけ下げるためです。
よどんだ空気は鶏が病気のもととなるため、健康的に暮らすためには新鮮な空気が必要なのです。
「小羽数」
一般的には、一棟の鶏舎で何万羽が、農場全体では何十万羽(多いと何百万羽)の鶏が飼育されていることも多いです。
これだけの羽数がいると、敷地や設備の関係上どうしてもケージの中で過密状態で飼育することになります。
鶏にとってストレスになり、病気も発生しやすくなります。
ひとたび病気が発生すると、周りへの伝播も早区なります。
また、羽数が多くても、飼育する人間は限られ、1人で何万何十万羽を管理しなくてはいけません。
鶏1羽あたりの世話に使われる時間は、非常に短くなってしまいます。
1羽1羽を気にして、きめ細やかに飼育するには「小羽数」で飼う必要があります。
現在、鶏遊園では約50羽を飼育しています。
「薄飼い」
「小羽数」で、開放的な鶏舎で飼育したとしても、鶏が過密状態では意味がありません。
過密状態では、どうしても鶏の周りの空気はよどみ易いですし、鶏同士の距離が近ければ、
病気が出た際に広がりやすくなってしまいます。
これはコロナ対策「3密回避」の中の一つで、「密接しない」に該当すると思います。
「平飼い」(「放し飼い」)の場合は、お互いを完全に離すことはできませんが、
一定面積あたりの羽数を少なくすることで密にならないようにしています。
鶏遊園では、現在約4.5羽/坪でのびのび飼育しています。
「粗飼料」
「粗飼料」とは、生草やそれを乾燥させた干し草、または、野菜(根菜)のようなものを指します。
「粗飼料」には、食物繊維を多く含まれており、容積が大きく、栄養価が低いです。
しかし、ビタミンやミネラルを含んでおり、育成には重要なものです。
生草や葉物野菜などの生の植物飼料は、「緑餌」といいます。
「粗飼料」と対になるもので「濃厚飼料」があります。
「濃厚飼料」は、米、麦、トウモロコシなどの穀類、大豆などの豆類や魚粉などの動物性飼料のようなものを指します。
「濃厚飼料」には、タンパク質が多く含まれており、栄養価が高いです。
鶏は、主に「濃厚飼料」を与えて育てられます。
しかし、「粗飼料」(特に「緑餌」)は、一般的には与えられることがほとんどありません。
「鶏遊園」では、「緑餌」を毎日たっぷり与えています。
「自家配合飼料」
「自家配合飼料」とは、その名の通り、自らが材料を混ぜ合わせて作る飼料のことです。
「鶏遊園」では、「自家配合飼料」に用いる材料を可能な限り地元で集め、その他のものも国産を使用しています。
抗生物質などの薬剤は使用せず、それらの材料を混合し、さらに「発酵」させた上で鶏に与えています。
人間も「発酵食品」を食べますし、体に良いといわれていますが、そもそも「発酵食品」とはどのようなものでしょうか?
人間が食べる「発酵食品」としては、納豆、味噌、ぬか漬け、ヨーグルト、チーズなどがあります。
「発酵食品」は、食材が微生物によって分解されること(発酵)によって、有益に作用するようになったものです。
鶏の餌も同様に「発酵」させることで、色々なメリットがあります。
① 消化吸収しやすくなる: | 微生物により、食材が分解されることで、栄養成分を消化吸収しやすなる |
② 免疫力が上がる: | 「発酵」を行う微生物が、腸の免疫細胞を活性化し、免疫力がアップする |
③ 栄養価が上がる: | 「発酵」により、色々な栄養成分が生成され、栄養価がアップする |
④ 嗜好性が上がる: | 「発酵」により、嗜好性がアップし、食いつきが良くなる |
⑤ 保存性が上がる: | 発酵で生成される物質や、発酵の際に発生する熱で、雑菌を減少・死滅させる また、そのようにして発酵を行う微生物が優位になることで、後からやってきた雑菌の 入る余地を与えないことで日持ちする |
「発酵」させたエサは、ただ混ぜ合わせるだけのエサと比べ、作るのに余計な手間がかかってしましますが、鶏にとっては良いことばかりですので、「鶏遊園」では数日おきに作り、与えています。
「自家労力」
養鶏を大規模に行おうとすると、どうしても機械化し、自動でエサや水を与えざるを得ません。
また、1羽1羽と触れ合う時間もほとんどなくなってしまします。
そこで、「小羽数」の鶏を、自らが汗を流して飼育し、鶏と一緒に生活していきます。
その中で、鶏をよく観察し、体調の変化を見逃さないようにします。
そうすることで、もし、鶏が体調を崩したとしても、すぐに対応できるようになります。
「低成長育成」
鶏が健康的に卵を産み続けるためには、成長を急がせないで、産卵に耐えうるしっかりとした体が必要です。
そのためには、ヒナの頃から「粗飼料」を与えてゆっくり育てます。
一般的には、鶏を早く成長させ、早く産卵を始めさせます。
しかし、体がしっかり出来上がる前から産卵が始まってしまうため、体への負担が大きく、産み疲れてしまいます。
「腹八分目給餌」
常にお腹が満たされている状態にはしないということで、「腹八分目」です。
エサが常に給餌器に入っていると、エサがあることが当たり前になってしまいます。
そこで、夕方までに食べ切る量を給餌し、もし、エサが残っているようであれば、餌箱を空にします。
翌朝、鶏は空腹になっており、この状態で給餌すると、鶏たちは競うようにエサを食べます。
結果、エサがより美味しく感じますし、消化・吸収が良くなります。
「八分目産卵」
無理に卵を産ませないということで、「八分目産卵」です。
実際には、繊維分の多い「自家配合飼料」を給餌して、それを実現しています。
鶏が一生のうちに産む卵の数は、鶏種によってほぼ決まっています。
そのため、一般的には若い時期からどんどん産卵させるような飼育を行うことが多いです。
高カロリー・高タンパク質のエサを給餌を続けることで、よく産卵するようになります。
すると、鶏は徐々に産み疲れし、それに伴い卵質も悪くなってしまいます。
エサが良ければ、さらにおいしい卵になります(影響する割合は、環境が7、8割で、エサは2、3割の感覚です)。
鶏遊園では、栄養バランスを考えたエサを自家配合し、発酵させた上で鶏に与えています。
鶏のエサは薬剤不使用で、魚粉も酸化防止剤不使用のものを使用しています。
なお、エサに用いる材料は可能な限り地元から入手(小麦、オカラ、米ぬか)しており、その他の材料(魚粉、カキ殻
等)も国産を使用しています。
「鶏遊園の自然卵」の特徴
黄身は盛り上がっており、膜が丈夫で破れづらい。
膜が丈夫であるため、箸や指でもつまめます。
膜を破っても、黄身の粘性が高く、流れだしづらい。
白身も盛り上がっており、弾力が強い。
一般的な卵と比較し、白身がより黄色味がかっている(ビタミンB2が豊富だと考えられます)。
生食した場合の味は、クセがなくスッキリしていますが、コクがあります。
焼いた場合は、白身がプリプリとした食感を味わえます。
お菓子作りに使用した場合は、生地がたいへん良く膨らみ、焼き上がりの香りも格別です。
また、一般的な卵と比較してコレステロールが少ないと考えられます(鶏が自由に動き回って運動をしているため、平飼
いや放し飼いの卵では低い傾向にあります)。
もし、身近に小さなお子さんがいらっしゃいましたら、ぜひ食べてもらってください。
小さなお子さんは味に敏感なため、大人の方以上に違いを感じていただけると思います。